
長谷雄聖ノート
永い宇宙の時間の中で、人の一生はほんの一瞬の光の瞬き程度でしかありません。 65歳の高齢者に仲間入りをして、初めて自分の人生の短さを実感します。 40代までは、人生の終焉がいつか訪れることを、頭では理解していても その短さを、本当に理解することはできません。 今日、また一人の建築家を見送りました。 長谷雄 聖 68歳 仲の良い友人でした。 余りにも早く人生を歩んだ建築家でした。 ・ 8月末に「ゆうちゃん、俺は最近腰が痛くて30分も座っていられないから、図面も描けないよ」と電話がかかりました。 整骨院に行っても、全然良くなりません。 近くの病院に行った彼は、精密検査を受けるように勧められます。 ・ 精密検査を受けに行った帰り、彼からの電話の声は沈んででいました。 「長谷雄さん、結果はどうやった?」 「うん、あまり良くなかった。肺癌のステージ4で手術は出来ないらしい」 癌は骨にも転移していました。 ・ 3年前に逝った 山口隆史 を思い出します。 ・ 東京芸大出身の山口隆史は師匠吉村順三譲りの、木の温もりとコンクリートの素材感 を活かしたやさしい建築を

山口隆史ノート
これは、2013年12月7日、74歳で旅立った山口隆史の記録です。 山口隆史は、東京芸術大学大学院を卒業。吉村順三研究室の一員でした。 卒業後、三菱地所設計部に就職し、池袋サンシャイン60等の超高層ビルの設計を行っていましたが、ある縁で大分市に設計事務所を出し、大分大学の客員教授をしながら、設計活動を行っていました。 ・・・・2013年8月の終わり頃、 山口さんがふらりと私の事務所を訪れ 「夏バテで食欲が無いんだ、胃潰瘍かもしれない」 と言う姿は、すっかり痩せていました。 二人で行った水天の寿司は、まあまあ食べていたので、「それだけ食えりゃ大丈夫」と笑って話しました。 「山口さん、運動不足かもしれないから、一緒にスポーツジムに行きましょう」と誘い、 スポーツジムに連れて行きましたが、体力の衰えは隠せません。 9月になり、かかりつけの内科で診察を受けた所、胃癌のようだから大きい病院で診てもらうように言われました。 どこに行くか相談を受けましたが、「癌専門病棟がある県立病院が良いのでは」と話したところ、他の人の意見も同じで、県病に行くことになりました